改善事例
水分摂取量増加に伴う理解度の変化?寝たきりからの改善?
●要介護の原因
前立腺肥大、高血圧、高尿酸血症、心不全、心房細動、大腸憩室、両下肢深部静脈血栓症
●この改善事例のポイント
- 寝たきりで、車イス生活をされていたが、約3カ月間のパワーリハビリにより、平行棒での歩行が可能となった。
- 水分摂取を含む、自立支援介護の4つの基本ケア"水分・運動・栄養・排便"を実施することにより、認知症状が大きく改善された。
●通所する前は・・・
このご利用者さまは、40日間の入院後に退院されたのですが、寝たきりだったため筋力も低下し、ADLは全介助、認知症状も進行しており、車イス生活を余儀なくされていました。入院中は常に抑制であったため、ご自分で水分を摂取することが不可能であり、尿意・便意を感じることも難しく、紙オムツを使用していました。
●通所後は・・・
認知症および難聴のため、スタッフの指示理解が困難だったのですが、補聴器の使用で声が聞こえるようになり、また1日の水分摂取量を750mlから1800mlに増やしたところ、徐々に指示内容を理解できるようになりました。通所当初は無気力で全てに無関心だったご利用者さまでしたが、約3カ月で意思疎通が図れるまでに改善しました。
●リハビリでの変化
平成27年10月12日 | 平成27年12月4日 | |
Timed UP & GO | 歩行できず | 平行棒で歩行 |
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開眼片足立ち | 計測不能(指示理解できず) | "手すりにつかまり、立位の保持可 (片足立ちは不可) |
握力 | 〃 | 右:8.9? 左:7.9? |
ファンクショナルリーチ | 〃 | 9.5cm |
長座位体前屈 | 〃 | 14.5cm |
30秒間足踏み | 〃 | 手すりにつかまり、立位の保持可 (足踏みは不可) |
水分撰取量の変化 | 750ml(食事時のみ250ml×3) | 1800ml(食事時400ml×3+食間300ml×2) |
利用時の変化 | 認知症および難聴により、こちらの指示理解が困難で、動作協力にムラがあった。ベット上のオムツ交換、体位変換は痛みを常に伴っていた。 | 補聴器を通して声が聞こえるようになり、指示が理解できるようになった。動作協力が可能となって、オムツ交換が楽になり、立位が取れてトイレでの排泄が可能となる(便意・尿意が出てくる)。 |
身体状況の変化 生活状況の変化 |
介護拒否・帰宅願望あり。食事摂取不良。脱水状態悪化。姿勢指示は困難な状態。両手をダランと下げ、物を掴むことができない。ぼんやりとした様子で無関心、無表情。唾液も多く、よだれも見られる。食事にも興味がなく、摂取ムラがあり、食べたり食べなかったりの状態(600kcal前後)。 | 車イスでの生活ではあるが、座位を取れるようになり、1日起きて過ごすことが多くなった。意思疎通が図れるようになって、介護拒否がなくなる。食事も1500kcal摂れるようになる。認知症状が改善し、記憶も明確になってきた。意思を伝えるようになり、会話が成り立つようになった。 |
●マシントレーニング
ローイング | 2.5? 1セット → 2.5? 2セット |
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レッグプレス | 2.5? 1セット → 12.5? 2セット |
チェストプレス | 2.5? 1セット → 2.5? 2セット |
ヒップアブダクション | 2.5? 1セット → 5.0? 2セット |
トーソフレクション | 2.5? 1セット → 2.5? 2セット |
レッグエクステンション | 2.5? 1セット → 2.5? 2セット |
●考察
40日間の入院後に退院された、寝たきりで認知症状のあるご利用者さまです。寝たきりのため筋力が低下していて、認知症状も進んでおり、尿意・便意を感じることも難しく、紙オムツを使用していました。また、入院中は常に抑制であったため、ご自分で水分を摂取することができませんでした。ですので、まずはご家族に水分摂取の大切さをお伝えし、ご家族のご協力をいただきながら、1日の水分摂取量を増やすことで、認知症状の改善に取り組みました。
当初は、認知症および難聴のため、スタッフの指示理解が困難でした。しかし、補聴器を通してこちらの声が聞こえるようになり、また1日の水分摂取量を750mlから1800mlに増やしたところ、指示内容を徐々に理解できるようになりました。合わせて動作協力も可能になって、ベット上のオムツ交換や体位変換などが楽になりました。
また、体力測定も、通所開始時は指示内容を理解できず、計測できない項目がほとんどでしたが、内容が理解できるようになったことで、計測できる項目が増えました。
さらに、3カ月間、パワーリハビリをしっかり行った結果、手すりにつかまれば立位の保持が可能となり、個別機能訓練として平行棒の歩行にも取り組めるようになりました。
本事例を通して、水分摂取の大切さを再認識すると共に、通所当初は、無気力で全てのことに無関心であったご利用者さまの認知症状が、自立支援介護の4つの基本ケア"水分・運動・栄養・排便"を実施することによって、大きく改善することを改めて実感することができました。