改善事例

74歳/男性・要介護3 その他

後縦靭帯骨化症を原因とした頸髄損傷、寝たきり・車椅子からの復帰

●要介護の原因
後縦靭帯骨化症(指定難病)、頸髄損傷、蜂窩織炎(ほうかしきえん)


●この改善事例のポイント

  • マシントレーニングは、そのご利用者さまに合わせた適切な負荷と回数を設定し、過度にやり過ぎてしまわないよう配慮することも大切である。
  • ご利用者さまに前向きな気持ちがあれば、"幸せホルモン"といわれる神経伝達物質のセロトニンやオキシトシンによる効果的な働きで、さらなる改善が見込まれることを再認識した。

●リハビリを始めたきっかけ
ご利用者さまは、57歳の時に頸髄を損傷し、「全身マヒを回復させることは困難」と医師に宣告されました。3カ月間、寝たきりとなりましたが、頸椎の大手術後、諦めることなくリハビリの努力を積み重ねて、右半身のマヒは残るものの、歩行ができるまでに回復しました。そして、パワーリハビリによるさらなる回復を目指し、当事業所へ通所することになりました。

●リハビリを始めてから・・・
利用当初は、靴を脱ぐ時やストレッチをしている時、ヒップアブダクションを行っている際に、ふくらはぎの"引きつり"がたびたび起こりました。また、緊張からか、会話中は目をそらすことが多かったと思います。しかし、3カ月後には、ストレッチで足が引きつる回数が減少し、会話でも相手の目を見て普通に話せるようになりました。9カ月後には、日常生活でも足が引きつることは少なくなり、他のご利用者さまとの交流も増えました。また、TUGでは両手引きによる歩行だったのですが、現在は自身でバランスをとりながら、歩行器で歩くこともできるようになりました。


平成28年2月2日 平成28年5月5日 平成28年12月8日
Timed UP & GO 1分16秒 50秒 44秒
開眼片足立ち 33秒 31秒 3分15秒
握力 右:7.2? 左:14.1? 右:8.8? 左:16.7? 右:9.0? 左:16.2?
ファンクショナルリーチ 29.0? 42.0? 37.0?
長座位体前屈 28.5? 16.5? 18.0?
30秒間足踏み 22回 31回 39回
水分撰取量の変化 200mL 200mL 200mL
主訴の変化 靴を脱ぐ時、ストレッチの時、ヒップアブダクションの際に、ふくらはぎの"引きつり"がたびたび起きました。 ストレッチで、足が引きつる回数が減少しました。 日常生活でも、足が引きつることが少なくなりました。
生活状況等の変化 緊張からか、会話中は相手から目をそらします。 目を見て、普通に会話ができるようになりました。 他のご利用者さまとの交流が増えました。


●考察
ご本人が、とても真面目でストイックな方であるため、マシントレーニングをやり過ぎてしまわないよう配慮し、合わせて、右マヒがまだ強く残っていることから、適切な負荷と回数によりマシンをセッティングしました。

体力測定結果では、順調に数値の改善がみられ、ご利用開始から1年後(平成29年3月)には、「マヒしていた右腕に感覚が戻ってきた感じがする」「気が付いたら、マシンの移乗が楽になっていた」「ゆっくり立ち座りができるようになってきた」という改善を実感する声が聞かれるようになりました。

パワーリハビリで病気を完治できるとは限りませんが、間違いなく運動機能低下の防止につながっており、本人に前向きな気持ちがあれば、"幸せホルモン"といわれる神経伝達物質のセロトニンやオキシトシンによる効果的な働きで、さらなる改善が見込まれることを再認識しました。

ご利用者さまの中には、難病を抱えていらっしゃる方が意外に多いということが分かりました。
周知度が低いゆえに、周囲に理解されず苦しんでいらっしゃる方も少なくなく、難病と分かるまでに何年も掛かったという方もいらっしゃいます。
今後とも、情報を発信することで難病を理解していただき、難病発見のきっかけにしていただけたらと思いますし、難病の方だけに限らず、全てのご利用者さまに、日々、前向きに生活していただけるような働きかけを行っていきたいと考えています。

(レッツ倶楽部 三沢堀口)