改善事例
パワーリハビリテーションによる躁うつ病の改善
●要介護の原因
脊柱管狭窄症(平成25年?)、躁うつ病(平成27年8月?平成28年1月まで入院)
●この改善事例のポイント
- パワーリハビリテーションの薬理学的効果に期待するため、マシンをしっかり行うことに重点を置きました。
- パワーリハビリテーションが、神経難病や虚弱高齢者に対して有効なリハビリ手法であることは周知の事実ですけど、本事例を通して、精神疾患を罹患するご利用者さまにも、非常に有効であることを改めて認識することができました。
- 今回、『躁うつ病』のご利用者さまの退院時から現在までのご利用で、症状の改善が大きくみられ、QOLの向上にもつながりましたのでご報告いたします。
●リハビリを始めたきっかけ
長期入院による身体機能の低下が見られたため、身体機能の回復を目指したいと思ったこと、また『躁うつ病』から来る引きこもりを防ぐために、定期的な通所によって活動の幅を広げ、心身の活性化も図りたいと思いました。
さらに、抗精神病薬を6種類服用しており、パワーリハビリテーションによる薬理学的効果で、服用する薬剤の減少を見込めるのではないかと考えました。
●リハビリを始めてから・・・
以前は、感情の起伏が激しく、外出を拒んでいました。また、利用中はベッドでの静養希望が多く、毎回1時間程休んでおりました。帰宅後も情緒不安定で、事業所に電話がかかってくることもありました。
しかし、現在では、家族との外出も増え、他者とのコミュニケーションも増えています。
また、ベッドでの静養もなくなり、歩行練習・ダイエット・絵を描くことへの意欲も高まっています。
平成28年1月13日 | 平成29年4月4日 | |
Timed UP & GO | 17秒5 杖 | 8秒83 杖なし |
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開眼片足立ち | 60秒(平行棒) | 60秒(平行棒) 2.2秒(杖なし) |
握力 | 右:31.4 kg 左:34.9 kg | 右:40 kg 左:39.3 kg |
ファンクショナルリーチ | 11cm | 20cm |
長座位体前屈 | 15cm | 41cm |
30秒間足踏み | 19回(推定2分・76回)平行棒利用 | 26回(推定2分・104回)杖使用 |
水分撰取量の変化 | 300ml | 650ml |
主訴の変化 | 全身の倦怠感・下肢の疼通。 | 倦怠感の訴えなし。 肢疼痛の訴え、減少。 |
生活状況等の変化 | 下肢に力が入らず、歩行も不安定であり、自宅では杖歩行。外では歩行器を使用していた。 | 歩行器は使用せず、杖歩行になっている。また、事業所内と自宅では自力歩行ができている。 |
●考察
日本の精神科領域における治療は、欧米諸国と比較し、大分遅れているといわれています。
「運動が精神科領域の疾患において有効である」という研究結果が、多数出ているのにも関わらず、日本では入院治療において閉鎖病棟に入院させ、運動の制限を行っています。
このように、日本では、運動療法を積極的に行っておらず、薬物療法を主体とした、たくさんの薬物を投与する多剤投与が問題となっています。
今回のご利用者さまのケースでは、長期入院に伴う廃用部分についてはもちろんのこと、パワーリハビリテーションがもたらす薬理学的効果により、薬剤の服用が半分に減りました。
また、少しずつ絵を描くようになり、現在では他者とのコミュニケーションも積極的に行って、ムードメーカー的存在へと行動変容してきました。
服薬量に変化が見られたリスペリドンは、抗セロトニン作用と抗ドーパミン作用を併せ持つ薬剤であり、この薬を内服すると、使われるドーパミンとセロトニンを少なくすることで、結果的に両者を増やす役割をもっています。
リスペリドンの服薬量が減少したにも関わらず、精神状態が安定し、QOL向上が見られたことは、パワーリハビリテーションの薬理学的効果が裏付けられたものであり、パワーリハビリテーションがもたらす効果は、日本の精神科領域の治療において、大きな改革をもたらす画期的な治療法であると考えます。
(リハプライド・博多)